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東京高等裁判所 平成8年(ネ)242号 判決

主文

一  原判決中控訴人ら敗訴部分を次のとおり変更する。

1  被控訴人らは各自、控訴人らそれぞれに対し、四八八万九九七三円及びこれに対する平成五年九月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人らのその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分し、その一を被控訴人らの、その余を控訴人らの負担とする。

三  この判決は、第一項の1に限り、仮に執行することができる。

理由

【事実及び理由】

第一  申立て

一  控訴人ら

1 原判決中控訴人ら敗訴部分を次のとおり変更する。

(一) 被控訴人らは、連帯して、控訴人らそれぞれに対し、五四八万九九七三円及びこれに対する平成五年九月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 控訴人らのその余の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

3 第一項につき仮執行の宣言

二  被控訴人ら

控訴人らの本件控訴を棄却する。

第二  事案の概要

原判決事実及び理由第二記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  当裁判所の判断

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由第三記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決六枚目表九行目から同七枚目表三行目までを、次のとおり改める。 「芳和は、ほぼ外側線の辺りを右手にプラスチックモデル(長さ三五センチメートル、幅二一センチメートル、重さ一〇〇グラム)の入った買物袋を携えたまま両手でハンドルを持って被害車両を運転していたが、被控訴人飯村は、自己の進行方向の左側を芳和が右のような状態で被害車両を運転していることを認めながら、被害車両との間隔を十分に確保せず、被害車両のハンドルの右端と加害車両の左端との間にわずか数十センチメートル程度の間隔を開けたのみで、時速約四〇キロメートルの速度で被害車両を追い越そうとしてこれと並進中、被害車両と加害車両の左側バンパーが接触し、芳和は被害車両と共に転倒して加害車両の車底部に巻き込まれ、加害車両の左後輪の後部内側のタイヤで轢過された。

本件全証拠によっても、被害車両と加害車両が接触した際の具体的状況は右以上には明らかではない。しかし、右認定の事実によれば、被控訴人飯村は、大型貨物自動車を時速約四〇キロメートルの速度で運転して被害車両を追い越そうとしたものであるが、大型で重量のある加害車両が自転車との間に十分の間隔をとらないで自転車の至近距離をそのような速度で追い越すようなことをすれば、そのような追越し自体が自転車の運転者を驚愕させたり、恐怖感を抱かせることにより、又は、追越しに伴う風圧や振動の影響により、自転車の運転を不安定にさせ、そのため、自転車が加害車両と接触し、転倒する危険のあることは明らかである。そして、本件においては、本件交通事故の際の芳和の被害車両の運転に過失があったと認めるに足りる特段の事情は何ら存しないから、被控訴人飯村には大型貨物自動車である加害車両を運転して被害車両を追い越すに際し、右のような危険を回避するため、被害車両との間に十分安全な間隔を確保して進行すべき注意義務があったのに、これを怠った過失があり、右過失により本件事故が発生したものというべきである。」

二  原判決七枚目表一二行目から同裏三行目までを、次のとおり改める。

「右一に説示のとおり、芳和には、損害賠償額を定めるについて、過失相殺としてしんしゃくされるべき過失があったとは認められないから、本件においては過失相殺をすべきではないものというべきである。」

三  原判決八枚目表八行目から一〇行目までを削り、同一一行目の「c」を「b」に、同末行の「一七二八万三一七八円」を「二〇三三万三一五一円」に改め、同裏七行目から九行目までを削り、同一〇行目の「c」を「b」に改め、同一一行目の「芳和の前記過失割合その他」を削り、同末行の「七六五万円」を「九〇〇万円」に、同九枚目表二行目の「二五四四万三一七八円」を「二九九三万三一五一円」に、同七行目の「一〇四四万二六七八円」を「一四九三万二六五一円」に、同九行目の「一一〇万円」を「一五〇万円」に、同一一行目の「一一五四万二六七八円」を「一六四三万二六五一円」に改める。

四  以上の次第で、控訴人らの本件損害賠償請求は、被控訴人ら各自に対し、控訴人らそれぞれにつき、一六四三万二六五一円及びこれに対する不法行為の日である平成五年九月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当である。

よって、控訴人らの本件控訴は右の限度で理由があるから、これと一部異なる原判決を右の限度で変更し、原判決の認容額に加え、更に主文第一項の1の限度で控訴人らの請求を認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菊池信男 裁判官 田中 清 裁判官 福岡右武)

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